前回の続き。長くなったので2つに分割したのだが、その後半。
仮に単なる言い間違いだとしても、ここしばらくの鳥越氏の発言には聞いていてはらはらさせられるものが多いのも事実だ。今年2月の記者会見では、高市早苗総務相の米議会勤務歴について「経歴詐称」と断じ、こう決め付けた。
「見習い待遇で無給で未契約のフェロー。コピー取り程度、お茶くみ程度の役しかしていない」
ところが、これに高市氏が議員立法やスピーチのための調査に従事し、1カ月2千ドルの研究費の送金を受けていたことを示して反論すると、弁護士を通じて回答した。
まず、「・・・のも事実」というのは、ブログをやっているとよくでてくる、ネット右翼に多い言い回し語である。「多い」のは事実ではなく評価だ。自分の評価を、事実として人に押し付けているだけで、それに基づいて話を勧めてもただの思い込みにしかならない。
高市さんの経歴については、彼が『決めつけた』のではなく、週刊現代などに報道されたとおりで、それによると、無給というのは事実で、何かの財団が研究生としてお金を負担し、派遣していた、というような報道らしい。
「無給と決めつけた」に反論するのなら、「給料をもらっていた」としなければならない。「送金」というと、その財団側が費用を負担しただけで、むしろ無給であることをバラしてしまっている。
「撤回・修正するのもやぶさかではない」
根拠なく、高市氏を中傷していたことを事実上、認めたのである。鳥越氏は同じ記者会見で、保守系の学者らでつくる「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」が本紙などに意見広告を出したことに関してこう述べた。
見習い待遇というのも、噂ではなく週刊現代が書いたもので、一般の週刊誌が書いていれば、それ相応の根拠があると考えてよい。
鳥越氏が、「事実上認めた」というのは、ねじ曲げた引用をしたことを自らバラしてしまったのと同じである。もしも、コピーお茶くみを鳥越氏が本当に撤回したのなら、はっきり「それについて撤回した」と書くはずである。ところが、鳥越氏が一般論か何かで言ったことを引用し、無理に撤回したかのような捻じ曲げをしていることが、この文章からわかってしまう。
鳥越氏は同じ記者会見で、保守系の学者らでつくる「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」が本紙などに意見広告を出したことに関してこう述べた。
「日本会議という右翼的な団体があって、そこからお金が出て、産経と読売に意見広告が出ている、ということがある程度分かってきている」
この発言も日本会議に虚偽、事実無根として撤回と謝罪を求められることになった。一切、事実関係を検証しないまま、堂々と陰謀論を口にしてはばからない姿は、とてもジャーナリストの流儀とは思えない。
日本会議が、主張した、虚偽、事実無根であることは一方当事者の言い分に過ぎない。それともひょっとして、産経にとって日本会議が主張することは絶対なのか?もちろん、一方当事者が主張したからと言って、「事実関係を検証しなかった」にはつながらない。ましてや「陰謀論」は飛躍の極みである。とてもジャーナリストの流儀とは思えない、と言う前に鏡を見たほうがよい。
鳥越氏は3月の記者会見でも、「安倍晋三政権はテレビ報道を神経質に気にしていて、監視チームを作ってチェックしている」と明言したが、これも証拠も証言も示しておらず、根拠不明で裏付けは乏しい。過去に新聞記者だったことが信じられないぐらい「事実」を軽視してはいないか。
残念ながら、2014年の11月に放送局宛に安倍個人ではなく、副幹事長、報道部長名義で、報道内容に対する文書を出しており、それなら「チーム」で行動していると考えるのは何らおかしくない。裏付けに乏しいどころか、実際の文書まで公開されている。
さらに、NHKに対して、南京大虐殺や従軍慰安婦についての言及を禁止していることが
内部文書で明らかになっている。
産経新聞は、日付とテレビ欄以外ウソしか書いていない、と言われているらしいが、それもやむを得ない。現在「新聞」と名乗っていることが信じられない。しかも、あちこち自ら墓穴をほって、痛々しいほどだ。だが、手の内を見せながら、ばれる手品をやるという見世物もときどきなら楽しい。
コメントの投稿