最上の帽子は頭にのっていることを忘るるような帽子である。最上の政府は存在を忘るるような政府である。
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 読売新聞に「編集手帳」という欄がある。あまりまじめに読む気にもならない文章なのでほとんど無視していたが、最近電車の車内広告などで目につくように、というより目障りになってきたため、ちょっとこれに触れてみたい。

 車内広告では、その編集手帳の一節を詩的なフォトブックの一ページというスタイルで紹介し、読売新聞の世界を味わって欲しいようだ。会社としても随分自信があるようで、自分で「名文」とまで書いている。さらに、おそらく中高生を相手に文章のお手本として使ってくれということだろう、書き写しノートのようなものまで販売しているようである。

 最近目について、どうしても一言いいたくなったのが、紅葉という広告である。夕暮れの空を見上げる若い女性が何かに感極まったのか、頬に涙を伝わせている写真に次の文章が添えられている。

紅葉が美しく色づくには
三つの条件があるという。
昼間の日差し、夜の冷気、そして水分である
悩みと苦しみ(冷気)に打ちひしがれ、
数限りない涙(水分)を流し、
周囲からの温かみ(日差し)に触れて
人の心も赤く、黄色く色づく。
紅葉の原理は、どこかしら
人生というものを思わせぬでもない



 まず最初に気づくのはカッコである。詩的な文章では、特別な意図でなければ括弧書きの説明をつけるべきではない。あまりにクドいし、読んでいて極めてリズムが悪い。こんな説明を付けないで日差しと冷気と水分を表現すべきだろう。そのためには、最低限の条件として、条件を挙げた順に、つまり、昼間の日差し、夜の冷気、水分と書いたのだから、その順番に書けばよいだろう。そうすればこの醜いカッコ書きを付けなくても相手に伝わりやすい。

 次に、文章の最後に最初の文に戻る、というのは基本だから、編集手帳でも再度紅葉が出てくるのはよい。ただ、ここで「人生」と書くのは極めてカッコ悪い。またしてもくどすぎるのだ。イソップ童話を読む幼児ではないのだから、お説教じみた書き方をせず再現部では同じ木の話に戻るだけでよい。それでも読者の心のなかでは別のものになっているはずだ。それが人の心に余韻となって残る。

 あと気になったのは、ここでいう「水分」は、木に与えられる外からの水分(雨や霧)のことではないのかということだ。もしそうなら、「涙」という自分から出ていく水分ではなく、人間関係から得られる潤いのようなものに例えるべきだろう。そうでなければ、木は自分がもともと持っている性質だけで美しく色づくんじゃなく、周りに赤くしてもらってるんだよ、という話にならない。この文章はカッコ書きがおかしいだけでなくそもそも支離滅裂であることになる。
 なお、一応この点について調べてみたところ、葉の根元のところが水分を通さないようにすることによって葉の水分が出ていかず、葉に残った水分が各種の反応を促進するということらしい。ということは水分を出すことでもなければ、もらうことでもない。自分自身がもつ性質によって水分の流出を防ぐということなのだから、水分に関していえば、自力で紅葉するというのが正確なところであり、残念ながらこの題材には使えない。水分とどこかで聞きかじったのだろう、きちんと調べもしないで、水分という言葉だけで適当な推測をして「名文」を書こうというのは、中高生には絶対に真似をしてほしくない。
 ちょっと計算高い人を評して「彼は合理主義者だね」などという知ったかぶりオヤジの典型である。
 水分の話に戻って、ここで無理にたとえるとするなら、樹木が水分を逃さない、つまり涙をこらえるということになるが、それでは編集手帳は正反対のことを書いていることになる。
 これを中高生が「お手本」として写すのであれば、どこかしら日本の将来を思わせぬでもない、ことになってしまうだろう。
 ちょっと試しに変えてみる。

紅葉が美しく色づくには
三つの条件があるという。
昼間の日差し、夜の冷気、そして水分である
あるときは温かい人の心に照らされ、
またあるときは冷たい仕打ちにあう。
それでも人のつながりに潤いを感じ、
人の心も美しく色づく。
木は、それが持つ本来の力だけで
ああまで美しくなるのではない


 当然ながら自分で「名文」などという気はないが、冒頭の駄文よりは最低限のルールを守って書いてみたつもりである。

 今回は紅葉をテーマにした「名文」を取り上げたが、これだけでなく、ほかの名文もまた楽しいお笑いが満載なので、全部ではないにしても次回以降いくつか取り上げてみたいと思う。
コメント

確かに

初めまして。
編集手帳、実は私もなんだか違和感、というか嫌な感じを持ってます。どういえばいいのかわかりませんが、お説教くさいというか、去年の震災の時にずっと流れた広告を思い出し、もういらない、と思っていました。

編集手帳は鼻につくものが多いように思います。読売新聞からすればインテリが書いたハイブローな文章、というつもりなのでしょうが、たいした中身はないのが常。
件の「紅葉」の読みづらさ、くどさもそうですが、引っかかりを覚えるのが原理という言葉の使い方です。
紅葉の仕組みを原理と呼ぶのは大げさすぎる。そんなに軽く使うべき言葉ではないと思うのですが。

Re: 確かに

すおみさま、コメントありがとうございます。
そういえば、震災直後にテレビで流れ続けた広告はうんざりという印象を持った人が多かったようですね。私も、電車の中で編集手帳の広告を見せられると何か同じような嫌な感じがあったなと思っていたのですが、確かに言われてみると、それかもしれません。

Re: タイトルなし

コメントありがとうございました。
> 編集手帳は鼻につくものが多いように思います。読売新聞からすればインテリが書いたハイブローな文章、というつもりなのでしょうが、たいした中身はないのが常。

 独りよがりの自称インテリということなのかもしれませんね。まあそういう点では私の書いた文章も同様に見えるかもしれませんが。

> 件の「紅葉」の読みづらさ、くどさもそうですが、引っかかりを覚えるのが原理という言葉の使い方です。
> 紅葉の仕組みを原理と呼ぶのは大げさすぎる。そんなに軽く使うべき言葉ではないと思うのですが。

 おっしゃる通り、わざわざ原理などと書くと違和感がありますね。

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