最上の帽子は頭にのっていることを忘るるような帽子である。最上の政府は存在を忘るるような政府である。
----徳冨蘆花「謀反論」

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 前回、自民党の「小さな政府」論はもはや時代遅れだと書いた。もちろん、大きければなんでもいいわけではない。たとえば、自民党政権は無駄遣いして肥大化した政府という点では大きな政府だったが、それが容認されるわけはない。本来、政府の役割自体は大きく、無駄遣いの点では小さな政府でなければならないところ、自民党政権は政府の役割は小さく、無駄遣いだけは大きな政府であったということだ。これはそもそも論外の寄生虫政権だった。
 民主党の方向性は、公約を額面どおり受け取る限りでは、政府の役割は大きく、無駄遣いの小さい政府ということになるだろう。
 そして、新しい自民党の方向性は、政府の役割も無駄遣いも小さい政府、といってよいように思う。そうすると、争点は政府の役割が大きいか小さいかということになる。

 以前、橋本政権のころ、日本はレーガンやサッチャーを模範とした時代があった。フリードマンなどの経済学者がケインズ批判を展開したころで、小さな政府論の走りといっていいと思う。私はこれらの国で経済の運営がうまく行ったとまでは思っていないが、インフレが加熱するような経済において政府の財政支出を抑えることは、大きくは間違っていなかったかもしれない。しかし、橋本政権は、デフレ傾向にある日本で同じことをやった。便秘の患者に効いたからと下痢の患者にも同じ薬を飲ませたようなものだった。
 橋本さんは、後にこの政策の誤りを認めていたようで、2001年の総裁選で小泉と争うときには、その誤りを正した政治を行うつもりだった。あのとき、「転向した」橋本を選んでいたら、日本はもう少し違っていたかもしれない。ところが、残念なことに不正解とわかりきっている橋本の誤りをさらに増幅するような小泉が選ばれてしまった。失われた10年に続く転落の5年が始まった。橋本はスズメバチの巣に近づいてやられたが、小泉の政策はそのスズメバチの巣に突撃するようなものだった。二回目にさされると大変なことになる程度の知恵があればよかったのだが、彼にそんなことを求めるのはもちろん無理だった。そして、公約どおり自民党をぶっ壊したが、それは日本を破壊することを通じてのことだった。。

 では、大きな政府論にしたがって、財政支出をすればよかったのか。それも外れだろう。たしかに、こういうときに財政支出をすればいいといったのはケインズということになっている。一国単位で考え、経済が閉鎖されていたり、外国貿易があったとしても固定相場制ならそれはある程度あたっていたかもしれない。変動相場制の現在では、あちこちのコメントに何度か書いたが、マンデル=フレミング効果が働く。つまり、変動相場制下において、政府の支出は利子率の上昇→為替相場の上昇をきたし、経済を冷え込ませるため、効果がない。だから、ばら撒きをやってもマクロ経済的な効果は期待できないのだ。ただ、弱者限定でばら撒くなら、所得再分配という意味合いはあるからその点は無意味とはいえないが、自民党の政策にはその効果すらなかった。

 財政政策が無効だとすれば、やっぱり小さな政府に戻るではないか、といわれそうだが、それも無理だろう。市場が信頼でき、任せておけばうまく行くのなら、新自由主義で大いに結構だ。しかし、この点についての答えは出ている。ここでいう「答え」とは、自然科学的な答えではもちろんない。ブルボン王朝が秩序を維持できるならそれは「正しい」し、同じ政策がギロチンで終わりを迎えるなら誤りである。

 市場に任せていてもうまくいかない。現代の資本主義は、われわれが思っているより、いやマルクスが思っている以上に不安定なものなのかもしれない。マルクスは資本家がいて労働者がいる世の中を想定していたが、今は所有と経営が分離していて、「資本家」が経営するのではない。株式となった資本は手持ち資金の何十倍、何百倍というレバレッジをかけたギャンブルの対象となって、きわめて不安定な動きをするようになる。資本家がいなくなったんだから階級対立という図式は成り立たなくなったんだよ、とマルクス批判をするのもいいが、実際には逆にマルクスが考えたよりもより不安定になっている。
 資本主義で行く限り、この不安定性に対して何らかの手立てが必要だということで、ケインズ政策のような考えも出てきたが、上で述べたとおり、変動相場制ではそう簡単ではない(ユーロのように単一通貨とすれば、究極の固定相場制だからその経済圏の中では少しうまくいくかも)。そのうえ、ケインズであっても「資本家」が利子率から経営判断をするというモデルに基づいており、所有と経営が分離して、株主が四半期ごとに配当をよこせ、よこさなければ売る、といって株価の乱高下が起こる事態までは想定していない。経営者は短期的にリストラが求められるだけになってしまう。

 この不安定さを取り除くための「大きな政府」が今後求められることになる。それは単なるばら撒きとは異なる。政府が断固として条件整備を行う姿勢を見せる、その上にできる安定と信頼がなければ経済は好転しない。

 たとえば、道路の整備。
 全国無料の高速道路をはじめ、一般道路も含めて整備が行われる、その道路の上で宅配便業者たちは自由に競争すればよい。ほかには、携帯電話については、もともと電電公社が持っていた公共的なインフラを再度国有化し、電話局に建てた携帯基地局もdocomoに独占的に使わせるのではなく、新規参入者にも自由に使わせる、つまり強制ローミングを実施する。その上で自由にサービスを競わせる。これを行うだけで、経営判断の負担がどれほど軽減され、経済に効果をもたらすことか(これは最初にやっておくべきだったのだが、今から必要かどうかはわからない)。
 ほかには郵便制度、国鉄などの公共インフラも同様だ。国鉄を「私有化」したために、鉄道のネットワークは大正時代以前に逆戻りした。これが都市と地方の格差をいっそうひどくした。旧国鉄時代から、時間に正確なことで有名な日本の鉄道を、「組合員がこれこれをしてサボっているらしい」などのおよそ重箱の隅をつつくようなキャンペーンにころりとだまされてとてつもない財産を失ってしまった。ドイツの高速鉄道事故でわかったとおり、日本の国鉄はああいう事故を避けるためにも、徹底的に基礎研究を行っていたのだ。福知山線事故を経てもいまだに国民の多くが国鉄「民営化」とはなんだったのか、気づかないのはどういうことか。今になってみれば中曽根が労働組合をつぶしたんだと自慢して見せるように、ただの党利党略に利用されただけだった。
 ヨーロッパは国鉄が一般的であり、民営化しているように見えて実はインフラの部分はきちんと国が押さえている。誤った民営化に取り付かれて国民の財産を売り飛ばす愚は郵政民営化の過程を見ていれば誰にでもわかる。
 地デジもやめる。日本のような地形ではお金がかかりすぎるし、新規参入を阻害する(政権党には情報操作ができて都合がよい)だけである。衛星を上げる技術は十分あるのだから、それだけで1000チャンネルは確保できる。年間数百万円くらい支払えば誰でも放送局が開設できるようにする。たとえばワゴン車一台だけで現地にいつも突撃する放送局などを認めてもよい。
 ほかには公的な介護制度、無料で高等教育まで受けられる制度など、条件整備として行うべきことはまだまだたくさんある。

 小泉改革の否定、新自由主義の否定はバラまきではない。大きな政府というのは支出さえすればいいというわけではないのだ。だから麻生は小泉の間違いに二重線を引いて訂正し、もうひとつの誤答を書き込んだのである。市場原理のよさを生かす、そうして初めて経済は息を吹き返す。民主党の高速道路無償化や就学援助制度は最低限この方向性に乗っている点でマシである。自民党はいまだにバカの集団だ。
 なお、これに付け加えると、私がここで想定した河野太郎ではなく谷垣が総裁に選ばれたようである。自民党は結局旧来の構図のまま、私が想定するレベルにすら達しなかったということか。

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