自民党というのは哺乳類の知能を持たない集団というべきか。にわとりはフェンスの向こう側にえさを置かれると、裏に回るという知恵がないために、フェンスにむなしく突進し続けるという話があるが、自民党をみているとこの話を思い出す。
2005年、小選挙区制の民意のゆがみを利用して不当な議席を得た自民党。次の結果はわかっていた。私ですら「自民党は、次の総選挙で2005年の復讐を受ける可能性が高く、ずいぶん虫のいい話だが、負けそうなときには小選挙区制では困るはずだ」と
書いた。
民主党はこのあたりのことは理解しているはずである。ただ、民主党の場合、再度の政権交代よりむしろ、政権交代が起こらないで今後独裁政権となってだんだんに腐敗していき、自分たちでもどうしようもなくなる事態が生ずる恐れを抱いているだろうし抱いていなければならない。国民のための政治をしようと意気込んでいるフレッシュなうちに、そして腐敗が始まる前に比例代表制度を検討してもらいたい。
次に、選挙制度について考えるべきいくつかのポイントを挙げてみる。
1.小選挙区制度、比例代表制度のメリット、デメリット? モノの本には、各選挙制度の長所・短所などが並列的に並べて書かれている。これ自体が一種の洗脳ともいえるものである。
たとえば、何かの決定方法で、ジャンケンで決める・決闘で決める方法が考えられたとして、それぞれのメリットデメリットなどとならべるだろうか。決闘は相手を傷つけ、場合によっては殺すのだから、人権侵害の決定方法であって、現代では許されず、そもそも並列的に並べて論じられるものではないはずだ。
小選挙区制は、民意をゆがめ、たいていの場合過半数の国民の意思を無視する人権侵害の制度であって、そもそもあってはならないものである。民主主義では国民の意見を勝手にゆがめる権利は誰にもないのだ。
このことについて、
以前書いた記事であげた「50回選挙をやっても自民党が負けない50の理由」(土屋彰久)から再度引用しておく。
「小選挙区制にも比例代表制にもそれぞれにメリットとデメリットがあるというような誤解があるが、これは、この国の支配層が全力を挙げて完全比例代表制、ないし比例代表制中心の選挙制度への移行を阻止すべく、御用学者を総動員して比例代表制のデメリットを喧伝しているために拡がっている誤解である」
2.比例代表制度でナチスが生まれた? 比例代表制だと小党分立になり、政治が安定しないために、結局ナチスが生まれたんだ、という人がいる。たとえば、
こちらのサイトがそうだ。
第一次世界大戦後、莫大な賠償金、さらに他国による工業地帯への軍事占領に加えて世界大恐慌となれば、選挙制度がなんであれ、ああなる。むしろ選挙結果からみる限り、小選挙区制の方が早くナチスが政権を取っていたともいえる。
では本当はどちらがナチスを生むのか・・・これは愚問である。
実際にはどんな制度をとっていても、なるようになる。例えばブルボン王朝は小選挙区制など問題にならないほど民意の反映を遮断していたわけだが、結局倒れる。かりにブルボン王朝が比例代表選挙をやっていたとしたら、流血やギロチンなしに、緩やかにかつ速やかに現在のフランスになっていっただけのことである。つまり、比例代表制など民意を反映する制度は触媒のようなものであって、最終的に安定に向かう段階をスムーズにする。小選挙区制のような民意を遮断する制度でも結局政権交代は起こるが、そこには流血とまで行かなくても、国民の自殺や絶望を引き起こし、身にしみて自民党の本質を知るまで政権交代が起こらない制度である。
3.比例代表制は政党しか選べないから、選挙権の侵害? 比例代表選挙では、政党を選ぶことしかできず、候補者個人を選択できないから選挙権の侵害であるという人がいる。
しかし、これは選挙制度とは関係がない。小選挙区制でもマニフェスト選挙をやるイギリスは政党のマニフェストに対して投票するのであって、候補者個人に投票しない。全くのでたらめである。
4.比例代表制では政治が不安定になる? これはさっきのナチスの話に関連する。第一次世界大戦後のドイツのように、普通にやっていたら運営不可能な国にされてしまったら、政治をひっくり返せという勢力しか出てこなくなる。それが共産党支持とナチス支持という両極端に世論が分断されてしまった理由である。しかし、今はそんな時代ではない。冷戦終了後、明確に共産主義を主張する政党も極端な右翼もそれほど影響力を持たない。ほとんどの勢力がだいたい中道で、比例代表制で小党分立になっても、若干自由主義的か福祉主義的かという程度の違いしかないため、政治が大きく混乱するような時代にはない。
そもそも小選挙区制だったら政治は安定するのか。前回も書いたが、多数をとった政党が悪行の限りを尽くしたと思ったら大敗して大量の無職者を生み出し、一方で100人だった政党が300人になって、大量の素人を生み出す制度のどこが「安定」なのか。
5.比例代表制では責任の所在が明確にならない? 自民党がやってだめだったら民主党に、という政権交代に対して、社会民主党と緑の党の連立政権がだめだったら誰が悪いのか、責任の所在が不明確とも考えられる。それは国民を馬鹿にした発想である。きちんと比例代表制でも政権交代が行われている。例えばドイツでもきちんと中道左派がうまくいっていないと認識されれば、中道右派に緩やかに政権交代している。むしろ、なんだかわからないがとにかく変えろ、というような選択が行われたのが今回の選挙結果ではないのか。
6.比例代表制は選挙区が広くなってお金のかかる選挙になる? これはインターネット選挙解禁など、いくらでも方法はある。小選挙区制になってから政治献金が目に見えて減ったとか政党助成金をなくすことができた、などというのであれば説得力があるが、現実は全く違う。理念だけの無意味な議論である。
まとめ 以前から比例代表制を主張しているが、別に自民党が勝ったから主張していたわけではない。我々の意思をゆがめる権利は誰にもなく、著しい人権侵害だから言っているのである。
もし第一位の党が30%の得票率であれば、それが国民の意思である。何を勘違いしているのか、政治を安定させてやろう、などと勝手に民意をゆがめ、圧倒的な議席を与えても、それがいかに偽りの多数であり、偽りの政治の安定であるかをこの2度の選挙が示した。その上、死票を出したくない、勝ち馬に乗りたいとして、本来自分が支持する政党にすら投票できなくなるあり得ない制度が民主主義からいかに遠いか、これを機会に本気で考えるべきときにきているのではないか。
>政治を安定させてやろう
もし政治家がこんなことを考えて選挙制度を決めていたとしたら、これこそが最も傲慢で、有権者・国民をバカにしたものですね。
もしかしたら、引用・転載差せてもらうかも知れません。その際はよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます
おっしゃるとおりで、おためごかしに民意をゆがめて、ついでに自分たちの議席数を増やそうというのは許されないことだと思います。
引用、転載等ご自由になさってください。
比例代表制は無所属を選べる
を見て、補足したくなりました。
まず、個人を選べる仕組みを持つ比例代表制は存在します。
参議院の非拘束名簿方式や、ドイツの小選挙区比例代表併用制や、衆議院の惨敗率&重複立候補などです。
また、「一人しか載せない政党名簿」を認めれば、「個人政党」の立候補が可能になります。
ここまでは、でっち上げの個人政党にしろ、候補者はどこかの政党に所属しなければなりませんでした。
しかし、中選挙区制の様に政党の届出を受け付けない比例代表制も存在します。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E6%AF%94%E4%BE%8B%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E5%88%B6
或いは、「単記移譲式投票」を検索してください。
このコメントを書き込むときにURI欄に入れたURLででっち上げている選挙制度も、政党名簿無しで比例代表制を実現するものです。
以上の様に、比例代表制に政党の概念は必須ではありせん。
たとえ、個人の選択が選挙権で必須だとしても、比例代表制の問題にはならないのです。
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